「サラ!」
アリスが倒れたサラを抱きあげる。
「しっかりして!」
そのすぐそばでカイが布をとりだし、サラの肩に巻く。
「止血しねーと死んでしまう。」
「怪我してるのはここだけかしら…」
「分からねぇ…どっちにしても地上に連れて帰らないと…。」
カイが傷に触らないようにゆっくりとサラをおぶる。
「帰り道覚えてるか?」
「ええ、もちろん。…そうか…あなた方向音痴だったわね。」
「…方向音痴っていうな。」
アリスが先頭に立つ。
「はいはい。お姉さんについてきなさい。」
「なんかムカツク」
会話はふざけているが帰る足はかなり早かった。
しかし途中まで戻ってきた頃…
「何か変な音がするわね」
ミシミシと壁が音をたて始めた。
カイは舌打ちをした。
「あの妖魔けっこう暴れてたからな…急がねぇと崩れるかも。」
2人はさらに足を早めた。
しかし壁から聞こえる音はだんだんひどくなり、ついに亀裂がはしった。
「ヤバイぜ、これは。」
「でも出口が見えるわ。急ぎましょう!」
出口に急ぐ2人を嘲笑うかのように地面にも亀裂がはいり、崩れだした。
「もう!あと少しなのに!」
そして、ついに足下が完全に崩れて3人は埋もれてしまった。
土に流され、地面に落ちていく3人…。
ところが運よく岩と岩のあいだに入り、3人はなんとか無事だった。
「けほっけほっ。」
体中が土まみれだ。おまけに目や口にも砂が入ってしまっている。
「う〜…いてて…」
カイが情けない声をあげた。どうやら落ちるときサラをかばうために自分が下敷になったようだ。
「大丈夫?」
「なんとか。けど、今度こそ戻れなくなったな。」
「…そうね。」
サラも無事だった。相変わらず顔色は悪いが息はちゃんとしている。
「あと少しだったのにな。人生うまくいかないもんだな。」
「…もう助からないのかしら、私達は。」
「はぁ〜…助けたかったのになぁ。」
「サラのこと?」
「自分が死んでも誰も困らないなんて言うんだぜ?そんなの間違ってるだろ。」
「…サラってばそんなこと言ったの。」
しばらく2人は無言になった。やっぱり目の前で人が死んでいくのはつらいし、黙って見ていることしかできないと悔しい。
「…畜生。」
カイは天井をにらんだ。
「神様の馬鹿野郎!」
ありったけの声で天井に向かって叫んだ。
すると
「お〜い」
「…ん?」
確かに返事が聞こえた。しかもその声は間違いなく町長の声だった。
2人の顔が希望に満ちる。