お葬式で、お兄ちゃんの彼女はよく泣いた。お兄ちゃんの名前を馴れ馴れしく何度も何度も呼びながら泣いていた。
それが酷く耳障りで仕方なかった。
私は、あまりにも悲し過ぎて涙さえ出ない状態。隣では彼氏が一生懸命肩を擦ってくれていた。きっと此処にいる私はホンモノではないかもしれない。だって、感情が湧いてこない。真っ白のまま。
お兄ちゃんの死によるショックで、私の声が失われた。一時的なものでしょう、と医者は言った。
別に声なんてイラナイ。それでお兄ちゃんが戻ってくるなら。まるで想いは人魚姫だなと思って、笑えた。