「もういやだ‥戦いなんか‥まっぴらだ‥‥!‥‥こんな事したって‥‥アキラは帰ってこない‥!」
龍一の心は、完全に折れていた。
(戻りたい‥‥いつものあの日に‥‥!‥‥‥‥‥‥‥‥でも‥帰ったら‥‥帰ったら‥警察に捕まっちまう‥‥!‥もし捕まらなくても‥‥アキラは‥‥どこにも‥‥いない‥‥!)
「うぐ‥‥うぐっ‥‥」
泣きじゃくった顔で、龍一は下を向いた。
涙が水溜まりになっている。
(アキラ‥‥どうすれば‥お前に会える‥?‥どうすれば‥お前と‥笑える‥?)
龍一はその視界の端に、ある『もの』をとらえていた。
腰のサバイバルナイフである。
「‥‥‥‥。」
龍一は腰に手をやると、その柄を握った。
【スラリ‥‥】
聞き慣れない金属音とともに、鉄の鞘から、その身は姿を現した。
鈍く光る鋭い刄‥‥。
細めの木なら、一振りで切り倒せるだろう。
龍一は、ナイフをゆっくりと、首筋にそえた。
「アキラ‥‥!」
手が、震える。歯が、カチカチ音を鳴らす。
首から伝わる冷たい感触が、龍一をそうさせた。
「今‥‥そっちに‥‥!」
【プツッ‥‥】
その瞬間だった。
【ズズゥゥウン‥‥】
【カタカタ…ガタガタ…!】