何処を見ても人、人、あたり一面、人だらけである。
とりあえず彼女は空港内を歩きながら、国際線の場所を捜すが半端でない人の多さに圧倒され、広い空港内で思うように動けず、ひたすらさ迷っていたのだ。
「何なの。この、人の多さは?」
困惑気味に莉央は思わず声を出した。
しばらく、人の海を掻い潜るように、ひたすら歩き、エスカレータを見つけて上がると目の前に国際線のカウンターが現れる。
ホッとひと息つき、近くにあるイスへと座ると、携帯の時計を彼女は見るのだった。
携帯の待受画面上にメールのマークがついてある事に気づくと、画面下に視線をおろす、画面下には携帯のマークとメールのマークが左右にあった。マークの右下には小さい数字でそれぞれ1と表示されていたのである。
(誰だろ?)
メールのボタンを押して先にメールを確認すると、宛名には父さんとなっている。すかさずメールを開封し、内容を読み始めた。
(なになに? ごめんなさい、とうさんたち、みおくりにはいけなくなりました。からだにはきをつけてがんばってくださいって、全部平仮名だし……んっ? ええ、来ないの! いくらなんでも薄情過ぎるよ。だから空港に来てないんだ。ほんと何、考えてんだか。……見送りに来てもらえば良かったな、学くんに。最悪)
莉央が家を出たのと同じ頃、高原学は講義に出ていた。
隣にはしっかりと、ご機嫌な顔をしたような藤堂由香が座っている。
学はしきりに時計を見ては落ちつかない様子だ。
そんな学を見ていたご機嫌の様子だった由香はイライラとしてきているようだ。
「もう、あの子、家出たのかな」