夏のある日のことだった。とある養鶏場で何千匹もの鶏がうなだれていた。暑さと窮屈さ、退屈さ、生臭さのせいである。ｶｰﾈﾙもそこに暮らす鶏の一匹だった。今日もｶｰﾈﾙは目の前に淋しく灯る豆球を眺めながら、もっと幸せな世界を想像していた。するとそこへ従業員の遠藤がやってきた。彼はずかずかとｶｰﾈﾙ達の前に来て自分達の産んだ卵を涼しげな顔で奪っていった。もう毎日見ている光景だが、ｶｰﾈﾙ達には腹立たしくて仕方がなかった。しばらくして遠藤は、ｶｰﾈﾙ達の前に粟やひえを出した。遠藤の行動に怒り心頭に発したｶｰﾈﾙは自分達を取り囲む鉄格子に八つ当りしたが何も変わらなかった。自分達の無念さを知ったｶｰﾈﾙは、また豆球を眺めはじめた。
それから数週間が経った。いつも以上の生臭さが鼻を襲い、ｶｰﾈﾙの目を覚ました。辺りを見渡して、彼女は硬直した。一年間同じ柵にいた老鶏のｻｻﾐが死んでいた。自分も彼と同じように幸せな世界を知らずに死んでしまうのだろうか…。そんなことを考えて焦ったが彼には何もできなかった。ｻｻﾐの死骸を処分することさえできず、ただ茫然と遠藤が処分に来るのを待つだけだった…。
評判次第で続く
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