ある日ウチの飼い猫が、散歩から帰るたびに紙切れをくわえて来るようになった。広告の切れ端のようなその紙には、意味のわからない文字がいつも3、4個書かれていた。 私と旦那は笑って、飼い猫の持って帰る暗号を見るのがいつの間にか楽しみになっていた。
1日目…「おはれ」
2日目…「いつは」
3日目…「もおはま」
「本当に何だろうねこれ。どこから持って来るんだろう?」
4日目…「えはみて」
5日目…「はいる」
そして6日目からは、ぱったりと猫は紙切れをくわえてこなくなった。ただひとつだけ変化があった。飼い猫の牙がひとつなくなっていたのだ。
そしてそれから数日後、郵便ポストに広告の切れ端に包まれた小さな牙が入っていた。紙には「はぬけ」と書かれていた。
「何これ?シャレ?!趣味悪い!!」と激怒する私の傍で夫は真っ青な顔をしていた。
何かを理解したらしい。