窓を眺めると、雨が降っていた。
東京タワーが今にも泣きそうに見えていた。
カーテンを閉めようとしたら、そこには君がいた。
あの人と傘をさしながら歩いていた・・・
僕と同じ笑顔で話している君を見ていると、チクっと胸が痛くなった。
その姿を見ていると涙が溢れてしまった。
笑顔で話す君の姿に僕が入り込める所がなかった。
逢いたい−・・今すぐに君に逢いたい。
雨の中を君の腕を掴んで何処かに連れて行きたい。
そう思ったが、今の僕には出来なかった。
”君が悲しむ顔を見たくはなかった”
君の左手には、シルバーの指輪がしていた。
あの人の物だと、実感してしまう。
君が振り向くと、僕と目が合ってしまった。
泣いている僕に君は、笑顔を見せた。
いつもの穏やかなその笑顔を僕に見せた。
笑顔を見せると、去ってしまった。
君が去る後姿を見つめ、指でなぞるとそっとキスをした。
窓に顔を埋め、愛しい人の名前を何度も呼んでも
君には届かず
「行かないで・・」
と何度も呟いた。
僕の中は、いつも君で溢れていた。
たとえあの人の物であったとしても−・・こんなにも貴方を愛している。
去った君を見ても、涙が止まらず溢れていた。
まるで、泣いている東京タワーのように。。