生涯の恋人 17話

ふく  2006-10-02投稿
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受験が近づいても
彼との登下校は絶対に欠かさない
それだけが毎日の楽しみだった

「そろそろ帰ろうか。」

彼の所まで迎えに行くのが決まりだった
「おぅ。」

学校から駅まで
この短い距離は
別れを寂しくする

「ねぇ、俺ら付き合ってるんだからさ、やっぱせめて家の近くまで送るよ。」

「そんないいよ、悪いし。」

「だってそうするのが普通なんじゃない?」

「そうなの…?」

「これからは家の近くまで送るよ。」

『普通』
どんな付き合い方が普通なのかは私たちは知らない
お互いに『付き合う』とゆうのは初めてだった
でも周りの恋人たちは彼氏が彼女を家まで送るのが決まりのようなものだった
だから私たちにとってはそれが『普通』だと思い込んだ

初めての駅から私の家まで二人で歩く道
緊張していた

「朋美。」

思わず彼の顔を見上げた

「朋美。」

もう一度彼が言った
言葉が出なかった
初めて下の名前で呼ばれた
心拍数が自分でも驚くほどに上がった

「だってさ、付き合ってるんだし…。下で呼ばれるの嫌?」
「ううん、嫌じゃない!」

嬉しい
かなり嬉しい
『付き合ってるんだし』
家まで送ってくれること
下の名前で呼んでくれること
彼なりに私との距離を縮めてくれようとしていた
それが痛いほど伝わってきた

「朋美。」

「何?」

「朋美〜。」

「何度も呼ばないでよ。」

「だって、何かいいもん。」

「恥ずかしいよ。」
その時交わした笑顔は新鮮だった



「ここまででいいよ、家あそこだから。」

「へぇ、あそこか。じゃあここで。」

さすがに家の前まではまずい
母親に見られる可能性がある

「うん、わざわざ送ってくれてありがとう。」

「また明日ね。」

「気を付けてね。」
手を振り歩き出した
家までの真っ直ぐな道を振り返らずに歩いた

家の前に着き
振り返ってみると彼が居た
見送ってくれていた
思わぬことで少しビックリした

手を振る彼
手を振り返す

突然家に入るのが後ろめたくなった
彼の所までもう一度走って行きたかった
そんな気持ちをグッと堪えるのが辛かった

彼が背を向けて歩き出す

寂しい

また明日会えるのに寂しい

今度は私が彼の背中を見送った

彼が見えなくなる前に呟いた

『また明日』



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