福島市立福島高等学校。この学校は今年の春に開校したばかりだ。当然部活動も一年生ばかりで、結果も地区敗退の部ばかりであったが、サッカー部は例外であった。地区体は三位で通過したものの、県大会では緒戦の福島実業に1対0で勝利したのを皮ぎりに、見事ベスト8の番狂わせを演じたのだ。…そしていま、一人の中学サッカー少年がこの高校に夢を抱いていた。物語は、ここから幕を開けるのである。「ねぇトシ、あんたほんとに受かんの?ボール蹴ってばっかじゃん。勉強しなかったら、落ちるわよ。」赤いコートに身を包んだ落合華子は、その切れのある目でにらみつけながら、横でリフティングをして道を歩く俊也に、演技でもないことを云った。「うるさいなぁ、冬験は実技と面接だっつの!!この第二の釡本が落ちるわけないだろッ」この反論した少年こそ、本作の主人公である、藤見崎俊也だ。二人とも中三で、ともに市福を受けるが、俊也はもう受かった気でいた。それは中学時代の、藤見崎の実績からくる自信であり、また確証とも言えた。とにかく、まずサッカーをしてるもので藤見崎をしらない者はいないのだ。