家に着くとスパイクとACミランのユニフォーム、それに脛当て等のサッカー必需品をスポーツバッグに詰めて颯爽とまた家を出る。部活を引退してからは、所属しているサッカークラブの福島第一に通うため、この行動が繰り返されてきた。休みの日もあるのだが、そのときは南向台にある小学校の校庭で、暗くなるまで(下校時すでに暗い)ボールと戯れた。当然、これほどやっていれば上手くならないはずはなく、結果も自然と付いてきた。落合華子とは小学校からの親友(?)で、切れの長い目と長い髪、そして背が高く中々の美少女ではあるが、少し口うるさいのが玉に瑕だろう。自転車で三丁目特有の急な坂を下ろうとすると、不意に聞き覚えのある声が呼び止めた。「トシィ〜!!まってよぅ、待ってったら、アイテッ?!なにすんのよッ!セクハラで訴えるわよ。」追い掛けてきた華子に、俊也は頭をコツンと叩いた。「なにか用かな?お嬢さん。我輩は忙しいのだ、これから練習に行かねばならぬ。用件は五十文字以内で的確に述べよ。」「なにざけてんのよ、今日は休みよ。お父さんが今日は休みだって、」華子はニヤリと笑い、またもときた道を帰っていった。