ポツンと一人残された藤見崎は、仕方なく南向台小(南小)の狭い校庭で、『+チームガイスト』のレプリカと戯れ合った。 …ドゴォン!!思い切り蹴ったボールは、プールとを仕切るコンクリートの壁にぶつかり、そのときの衝撃音が、校庭に容赦なくこだました。明日は入試である。落ちたらどうしよう…、行きたくないな…、そんな思いが俊也の頭の中を往来した。受験生なら、考えないものはいない。偏差値五十三、特技サッカーの少年は、普段なら考えもしない不安にかられ、心搏数が妙に上がった気もした。〔…今日はもうやめよう。大丈夫、受かるさ。〕背中の汗が冷えて冷たくなるまえに、俊也は帰ることを決断した。家に帰ると、母が珍しく顔を出して、「さあ、はやく風呂に入って寝なさい。あ、食事まだだったね、はやくお食べなさい。」と、急き込んで夕食を勧めてきた。普段ならこんなことは無い。断言できる、が、これは受験効果だろう。ある意味受験は良いことをしてくれる。それも今日で終わりだと思うと、少し残念に思ったが、さらに明日の試験で気を沈めさせた。はたして受かるのだろうか。食事が進まずベッドに上がった藤見崎は、不安に苛まれた。