近代的な洋式建築を取り入れている市立福島高校の校舎は、壮麗な洋館を思い浮かばせる、とても公立の学校とは思えない。藤見崎もそう考える一人であったが、そんなことよりも、いまは早く試験が終わってくれという、一つの緊張が藤見崎の頭を支配していた。受け付けは壮麗な正面玄関から左に曲がったところにあり、右にいくとサッカー部以外の部活が受け付けをしていた。左はサッカーのみの受け付けで、目視しただけでも百名はいる、かなりの受験者だ。合格枠は十八名で、すくなくとも六人に一人の割合か、ともかく狭き門なのはよくわかった。受け付けで名前を言うと、隣の受け付けの男子生徒がこちらを振り向いたのがはっきり感じられた。ちょっとした有名人気分を味わったが、すぐに現実へ引き戻された。百人どころではない、二百人はいようか、ともかく校庭を仕切るコーンの幅いっぱいに、試験官の説明を聞こうと首をのばす、色とりどりのユニフォーム姿の受験生達がいた。「やばい…、」すぐ隣の緑色のユニを着ている少年が、擦れるような声で言ったのを聞いたが、意識はしなかった。それどころでは無いのだ、自分が危うい。…もう、本当に…。