これは犬のエッセイです。
一番おいしかったのは、
ネバネバした納豆。
お父さんやお母さんがおいしそうに食べるから、ちょっとおねだりしてみたら。
あたしのご飯入れに納豆をひと握り入れてくれたの。
あたしはハナ。
この家では2番目の娘。
だけどそろそろ、わたしの方が年上になっちゃうかもね。もうすぐ5歳になるの。
舌を使って上手に納豆を食べると、珍しそうにお父さんとお母さんがのぞき込んでくる。
以外とおいしいじゃない。
あたしがここへ来たのは、4、5年前位。
あたしはまだ小さくて、あまり昔の事は覚えてないんだけど、ほんの少しの間だけ本当の産みの親のお母さんと一緒にいたわ。
他にもあたしには兄弟がいたの。
みんな同じ日に産まれた、仲間よ。
あたしはまだ小さかったから、よく覚えていないんだけど、ある日兄弟たちが次々と姿を消していったわ。
どこへいったの?
その時あたしはお腹がすいていて、早くお母さんのミルクが欲しかった。
でも、あたしにもお別れの時が来ていたみたい。
突然首根っこをつかまれて、大きなものに乗せられて…、それから見た事もない空き地に放りだされてやっと分かったわ。
あたしたちはすてられたんだって………。