二人の王子は父王にこの一大事を伝えると急いで身支度を整え兵を集め、カイルは東、アーチェスは西側へ馬を走らせた。王は四番目の王子ラディに自分と共にエイファの軍までともをするよう命じ、三番目の王子フィルに末娘リシュアと王妃を守るよう伝え国境に向かった。
「兄上、父上はどこへ行ったの?もうお休みの時間なのにこれからどこへ行くの?」
幼いリシュアは王の側近兵の一人、ダウェリーに抱きかかえられ王妃や乳母、数人の兵士と共に兄であるフィルに連れられ城の北側の離れの屋敷を目指していた。
足早に無言で歩く兄は鎧をまとい、いつも頭をなでてくれる優しい顔とは違い、十六歳とは思えぬ大人びて険しく緊張を帯びた顔をしていた。