僕の通う大学の裏手には、大きな山がある。
その山沿いには整備された小道が続いており、そこを歩いていくと、大学の男子寮につながっている。
その小道、昼間は問題ないのだが、夜になるとかなり怖い。
古めかしい街灯が等間隔にならび、途中には、山の中へと入り込む坂道もある。
サークルやコンパの帰りに、その小道を通らざるを得ない時などは、いつも怖い思いをしたものだ。
100mもない距離なのだが、気分によってはつい足早になってしまう。
――この小道が怖い本当の理由。
たしかに雰囲気もそうだが、小道を歩いている途中、しきりに山のほうから「がさがさ…」と音がするのだ。
――あるいは野生の動物がいるのか、風で草木がざわめいただけの話なのかも知れない。
僕と仲の良い友人との間で確立した説は、この山にはチュパカブラがいる、というものであった。
まぁそれはどうでもいいのだけれど。
後になって、学科の先輩から気になる話を聞いた。
この大学の男子寮は、かなり古い建物で、少なくとも30年の歴史があるとのことだった。
その歴史の中では、やはり色んな出来事があり、生きることを苦に自殺した者もいたのだそうだ。
実際に男子寮に暮らす、別の先輩の話によると、こうだった。
この間、後輩の部屋の畳の下から、魔方陣の描かれた紙切れが出てきたのだ、と。
そこには血の痕のようなものが残っていたのだ、と。
他にも、このような話はごまんとあるらしい。
小道の途中にある、山の中へと折れる坂道。
その先に何があるのかは、誰も知らない。