「はい。買って来たから。今日中に…調べよ?」「うん…ありがと。」
━━コイツが買って来た妊娠検査薬を握り締めて、昨日からずっと考えていたことを思い出した。こんな物一つで、わたしの運命は動く。
トイレから出て、コイツの笑顔を見たら泣けて来た…。
「…不安だった。」「うん。」
━━優しくて、全て包んでくれる声。
「本当にできてたらどうしよって…」「…うん。」
━━わたしの体を包む大きい腕。
「…でも、嬉しくない…」「…うん。」
━━わたしの髪をもて遊ぶ様に触れる、指先からは、信じられない程の熱を感じた…。
「ゴメン…不安な思いさせちゃって。…でも、俺も嬉しくない。わかんないけど…嬉しくない…」
━━…一つ一つの言葉が、耳に触れる度に、わたしの心が溶けていく。これで、良かった…。そう思えた。
愛する人を大切にしたいから、自分を大切にする。当たり前のこと…。それができなかったあの時は、今、一緒に居るコイツを大切にできてなかった。それでも今、あなたのお陰で自分を大切にできてるのかな?…左手をお腹にあてて聞いてみたけど、まだ、返事はないよね…。
大切にするよ?あなたのことも、あなたのパパも…
見つめる先にはいつも、優しい風と子供みたいなコイツが居る。