俺は､警察に足がつかないように､最後の力を目一杯出して､自転車で､行ったことのない町へ行き店を物色していた｡こじゃれたとこよりも､古びた定食屋とかの方が逃げやすいんじゃないかと思って､一軒の古びた店に注目した。○○食堂と書いてあって、建物はかなり古く､汚い｡俺は自転車を停めて店に入った。店内には客は一人もいなくて、厨房らしき所におっさんが一人、立っている。
「いらっしゃい。何にする？」
笑顔で注文を聞かれ､俺は胸が苦しくなった｡でも本当に､どうしようもないくらい腹が減っていて､何か食べないとダメなんだ｡
「じゃあ〜野菜炒め定食で。」 「はいよ｡」メニューを見ながらおっさんに告げ､俺はおっさんの仕事を見だした｡厨房からは野菜を炒める音と､食器のｶﾁｬｶﾁｬ、ﾌﾟｰﾝといい匂いがしてきた｡おっさんは一生懸命作っている｡
「おまたせっ！今日はあんたで終わりだから、大盛りの出血大サービスだよ！」おっさんがﾆｺﾆｺしながら俺の前に定食を置いた｡俺は何も言えなかった｡おっさんは店を閉めるのか､のれんを中にしまいだした｡
俺は目の前に出されたご馳走を、一目散に食べだした。久しぶりのちゃんとした食事に、胸が一杯になった。
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