俺と東京とおっさんと 後

ちえ  2006-10-03投稿
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食べ進めていく内に、俺はどうしようもないくらい涙を流してしまった。それは嗚咽に変わり、食べられなくなっていた。
おっさんは俺の為に一生懸命作ってくれたのに、サービスだと言って大盛りにしてくれたのに、俺は、食い逃げをしようとしている。自分が情けない。
おっさんのやさしさをふみにじってしまう。俺に向かってニコニコ笑いかけてくれたのに、裏切ってしまう。
俺が食べずに泣いていると、おっさんは
「自分の食器洗って、裏から出な。今度来る時は表から出れるようにしろよ。」と言って店の奥に行ってしまった。
俺は泣きながら食器を洗い、店を出た。おっさんがどうして金がない事をわかったのかはわからないけど、おっさんの人情に感謝し、俺は二度と食い逃げなんかしないと心に誓った。
その後、親に頭を下げて学費を払ってもらい、俺の生活も安定していった。しかしあの食堂を、もう、二度と訪れることはなかった。俺は卒業後、地元に戻って就職をした。今でもあの定食屋のおっさんを忘れていない。

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