そっと隣に並んでみる。覗き込んでみると、それは私も好きな小説で、何だか無性に嬉しくなった。
私も、同じ小説を本棚から抜いて、彼の隣で読み始める。
どれくらい経っただろうか。久しぶりに読んだものであまりにも夢中になりすぎていて時間が経つのを忘れていた。
あぁ。彼がもう帰ってしまっていたらどうしよう。
恐る恐る隣に目を向けた。
…彼は、泣いていた。うっすらと涙を浮かべ、今にも零れ落ちそう。
そう思った瞬間、零れ落ちた。彼は気付かず読み続ける。
男の人でも泣くんだ。なんて、不思議な気持ち。