ようやく彼が全てを読み終えた時、私はそっとハンカチを差し出した。少し驚いた顔をしたけど、笑顔で私に礼を言って、夕食でも、と誘ってくれた。もちろん私は笑顔でOKした。
思えば、その瞬間から、私は彼に惹かれていたかもしれない。
彼の左手の薬指に光る指輪に気付いたって、その気持ちは変わらなかった。
「旅行に、行こうか」
出会って、三年目の春の事だった。初めて旅行に誘われて、私はとっても嬉しかった。その反面、複雑な思いが芽生えた。
それが何を意味するのか、私は気付いていた。