生涯の恋人 19話

ふく  2006-10-03投稿
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十一月\r
いよいよ明日は推薦入試

担任の先生に職員室に呼ばれ
「とにかく落ち着いて頑張れ。」
そう言われた
緊張が増した

とりあえず今日はこのまま真っ直ぐ帰ろうと思った
彼は勉強をして帰るだろう
職員室を出て彼の所へ向かった

「熊崎君、ちょっといい?」

「うん、先生の話終わった?」

「うん。あのさ、今日はもう帰るよ。だから先帰るね。」

「もう帰るの?」

「さすがに今日は早く帰るよ。じゃあ頑張って、またね。」
そう彼に言い
教室を出た

「待って、俺も帰る!」

「え!いいの?」

彼は何も言わず少し笑って私を見た

彼の優しさだ

「ありがとう。」

正直
こんな日は彼と歩きたかった
だから彼の気持ちが嬉しかった



いつもより遠回りをして帰った

「緊張してる?」

「うん、少し。」

本当はかなり緊張していた

「頑張ってね。…それしか言えないけど。」

「ありがとう、頑張るよ。」

彼と歩いていると
緊張も和らいだ

私の緊張を察したのか
彼からの言葉数も少なくなっていった

あまり会話も弾まないまま家の近くに着いてしまった

「何かごめん、暗くして。」

「いやいいよ、仕方ない。」

「じゃあまた。」

「あのさ、これ。」
彼がバッグの中から何か取り出した

手渡された物はチオビタドリンクだった
私は少し笑った

「何、これ〜!」

「いや、明日行く前にでも飲んでよ。」
彼は少し照れくさそうだった

『私の為にわざわざ買ってくれたんだ』今日は始めから私と帰るつもりだったのだろう

「ありがと、必ず飲むよ。」

「ごめんね、こんな物で。」

「嬉しいよ。」

瓶の蓋には『朋美ガンバレ!熊崎』
と書いてあった

「お守りにする。」
そう言って別れた


『こんな物』
違う
『こんな大切な物』だよ

彼の精一杯の私への応援の気持ちだった
そして瓶の蓋の文字から彼の不器用さが伝わってきた

家に帰り冷蔵庫に入れようとしたがその手を止めた


いつもより夕飯を早めに食べ 早めにお風呂に入った
母も明日のことについては何も触れなかった

【おやすみ】
彼にそれだけメールすると机に置いていた『彼からのお守り』をベッドの横に置いた

彼は側で見守ってくれている

緊張はしていたが
そんな風に思うと
安心して眠ることが出来た

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