シンが女性達の輪に囲まれていた時だ。
「マリアー!!」
遠くで叫ぶ声、マグレス・フォルトナーの姿が見えた。彼は真っ黒なストレート髪にきりりとした顔立ち、まるで騎士のような美男子であった。身だしなみも整えていて、そこらの男子とは大違いである。
「あっ、マグレス!」
マリアはシンには見せたこと無い嬉しそうな顔でマグレスの姿を見る。
―やっぱり、マグレスと俺とは違うんだな・・・。
当たり前な事を思っていても、シンにとっては悲しいことなのかもしれない。
さすがに表情には出さないが、心の中では深く落ち込んでいた。
「ほら、早く行かないと愛しのマグレスが行っちゃうよ!」
相変わらず女性達はマリアをからかっている。マリアは女性達にそっぽを向いて行こうとした。
「分かっているわよ!じゃあね、皆!!」
からかわれていても、むきになって怒らないのが、マリアの良いところの一つかもしれない。彼女の優しい性格はシン以外の男子も惹かれてしまうアイドル的存在であった。シンは、マリアがマグレスの所に行く後姿を、ずっと眺め入っていた。