僕が大学一年の頃、先輩たち複数とよくドライブに行った。
「ねぇ先輩。今日はどこ行くんですか?」
そのとき、時刻は夜中近くを指してした。
翌日は日曜だったので、まぁ問題はなかった。
「楽しいとこ〜」
運転している先輩が言った。
「へぇ」
僕は楽しみにしながら、車窓を流れる景色を見ていた。
それから時間が少したち、車はやがて山道に入っていく。
「もうそろそろって感じかな」
後部座席の、僕の隣りにいた先輩が言う。
間もなく、山道の途中にある、駐車場のようなところへ車が入る。
「さて着いた〜。こっから歩くんよ」
我々、つまり僕と4人の先輩たちは、車を降りた。
僕は、先輩たちが歩いていく後ろについていった。
しばらくすると、公園の入口のようなものが見えてきた。
「さぁ、遊ぼーぜ」
なんのことはなかった。
森の中に設けられた、アスレチックコースだったのだ。
ただ…
ものすごく怖い。
それはそうだ。夜中近くに森の中にいる自分が信じられなかった。
まるでブレアウィッチの世界ではないか。
内心びくびくしながらも、何とか先輩たちについていく。
街灯なんてなかった。
そのため月明かりのもとで、目が暗闇に慣れることを待った。
とにかく早く帰りたい…僕はそう思い始めた。
ふと空を見上げると、満天の星空がある。
皮肉なほどに綺麗だった。
恐怖と安らぎが同居するその場所に、僕はしばらくうっとりしていた。
どんどん進んで行くと、狭い道にさしかかる。
踏み外したら、斜面を転げていってしまう。
我々は、携帯のわずかな光で道を照らしながら歩く。
すると、先輩たちの携帯のバッテリーが、次々と切れていくではないか。
結局残ったのは、僕の携帯だけだった。
当時僕は、プリカ携帯を使っていた。
苦労しながらも、我々はようやく元の場所に戻ってくる。
「怖かったっすね…」
「実はそういう場所だから…言い忘れたけど」
僕が提唱する、究極の二択。
真っ暗な森の中、一列でしか進めない道において。
一番前と、一番後、どちらが怖いのか。