「榎音ちゃん、遊ぼ―ぉ!」
公園のベンチに座っている、まだ幼い榎音に見知らぬ女の子が駆け寄ってきて言った。だが、榎音は首を横に振る。
「ごめんね。私、遊べない・・・」
と、榎音が言うとその女の子は両手でボールを持って走っていった。
「榎音」
榎音は横を向く。そこには、背の高い女の人の姿があった。榎音の顔はパッと明るくなった。
「お母さん」
榎音は目を覚ました。どぅやら夢を見ていたらしい。その時、部屋のドアがゆっくり開いた。
「榎音ちゃん、気分はどぉ?」
入ってきたのは看護士だった。看護士は、榎音の横に立っていった。
「咳出てない?」
「大丈夫です」
すると、看護士は部屋の隅から車椅子を持ってきた。
「じゃ、先生のとこに行って検査しようね」
榎音は小さく頷いた。
「う―ん・・・。これは・・・」
全ての検査が終了した。医師はカルテを見て少し悩んでいるような顔をした。
「もぅ、我々に出来る事はありませんね」
「じゃぁ、私・・・」
「そぅいう事じゃないよ。キミの体は健康になっていて、手の施し様が無いんだ」
「は?」
榎音は、キョトンとしていた。そして、昨夜の事を思い出した。
『貴女の体を健康な体にしたのよ』
昨夜感じた体の異変。最初は嘘だと思っていたけど、今はハッキリ分かった。「あれは、嘘じゃない」と。
(私は、早く死にたいのに・・・)
まだ天使の言葉が頭の中を回っている。
「ふざけないで・・・」
榎音は、右手を強く握っていた。