大都会の一角に、古ぼけた家がありました。
ところどころペンキが剥がれている、どこにでもありそうな２階建てビル。
一階は誰もいない空き部屋が六部屋。入口をまっすぐ進んだ先に階段がある。
そこから階段を上ると、古ぼけた看板と、木で作られたドアがあった。
「西村探偵事務所」
と看板には書いてあった。
リリン…リリン…机の上に置かれた黒電話が鳴る。
木で作られた机。黒電話と冷蔵庫。窓が二つ。これが部屋の全部だった。
机の奥に置かれていた回転椅子がゆっくり回る。
「はい、こちら西村探偵事務所です」
年は?歳くらい。一重と二重の目のどこにでもいそうな顔。
邪魔にならないように適度に切られた無造作ヘヤーの黒髪。青いセーターに黒のジーンズ。近くの帽子掛けにはシルクハットと紺色のコートがかけてあった。
「えっ…あ、はい…はいはい…了解しました…はい」簡単に電話を済ませて彼は立ち上がった。
西村裕太…彼は特別探偵
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