?崖淵斜陽館其の四

亜樹  2006-10-06投稿
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「嫌な予感がするなぁ」
中年の男はタクシーの運転手。
前に、手を上げてタクシーを止めている、若い女性が立っていた。

「いらっしゃいませ。どちら迄ですか。」
「蓮ヶ沼の先まで、お願いしますわ。」

ヤッパリ予感的中だな…
運転手の嫌な顔をミラー越しに見た女性客は
「嫌なら、私は此処で降りても良いのよ。後で訴えるけど…」

「そんな事は有りませんよ、お客さん。」

「何で、嫌な顔をするのよ!」

「余り、話たく無いんですがね、蓮ヶ沼は自殺の名勝ですよね。それに…」
「それに、何ですの?」

一昔前に流行した様な服装の女性客が、運転手に、食い掛かる。

「では、お話しますが…」
「以前に、若い女性客を蓮ヶ沼迄乗せて行くと、客は居なくなり、シートが濡れて居た事が有ったんですよ。」

「私が、霊だとでも思って居るの。」

「いえ、そんなつもりは…
只ね、前にも、この時間で、貴方の様に若い綺麗な方で…」

すると、後部座席で、水の滴る音が…

チョロチョロ、ポタンポタン…

もう、蓮ヶ沼…
運転手は、青く成り後ろを覗くと、前髪を垂らした女が!
「助けてぇ!」
「何を騒いで居るのよ、貴方の性で…漏しちゃったじゃないの」

「助かった、でも汚した分は請求しますよ。」

「解ってるわよ。あっそこ右に曲がって其処です。お金を取って来るので待って居てね。」
暫く待ってはみたが、なかなか出て来ない。
運転手はしびれを切らして取りに行くと、チャイムを鳴らして、出て来たのは老人の男。
「娘さんを、お連れしたんですが代金が未だなので…」
老人はビックリした表情に成り、運転手に容姿等を聞いた。
「間違い有りません、10年前に死んだ娘です。家に帰りたかったんだな。」
涙を流して、運転手に3万円渡して礼を言った。
運転手は驚きと何が何やら解らないままタクシーで帰って行った。
玄関を閉めた家で娘が出て来て老人に頭を下げる。
「お父さん、ごめんね、漏しちゃって恥ずかしくて…」

老人は位牌の中へと消えて行った。
母の形見のスカーフを外して、女性がベッドに入り、電気を消すと、家其の物も消えて行った。

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