「ま・な・ぶ! 学ってば」
講義室から出て行く学を引き止めたい一心で、講義中にも関わらず、大声を出した。
講義室一体に由香の声が響く、それでも、彼には聞こえないのか止まらずに、夢中で出て行ってしまったのである。
「Hey you!
Could I ask you to be a little more qeiet」
(君! ちょっと、静かに)
「I,m sorry」
(すみません)
先程とは比べ物にならないほど、弱々しい小さな声で由香は講師に謝ったのだ。
そんなやりとりがあったとも知らずに莉央は父親からのメールの内容を読むと、肩を落としては空港のイスに座っているのである。
気持ちを変えるため、改めて携帯の待受を確認した。
着信は高原学だった。
着信した時間は十分経ったぐらいで彼に急いで電話を掛けるが、携帯に何度もコールするものの出る気配が感じられない。
「出ないな。なんかあったのかな? 学くん」
諦めて携帯を切ろうとすると、携帯から男性の声がもれてきたのである。
「もしもし、莉央ちゃん? もしもし、莉央ちゃん」
「もしもし、学くん」
「莉央ちゃん、今まだ飛行機には乗ってないよね?」
「うん、まだだけど」
学に言われて、ハッとしてから空港内の電工掲示板を見る、確かめるといつの間にか、自分の搭乗する時間が迫っていた事に気づく。
「乗ってないんだけど、もうそろそろ手続きしなきゃ。でも、どうして?」
莉央は焦っているけれども、疑問を投げ掛けたのだった。