女子生徒は泣いていたのではなかった。
ただじっと、前方を見据えている。
ちょうど教卓のあたりだ。
先生はその場から動けないでいた。
あまりの恐怖に、言葉すら出ない。
その女子生徒の目が、不気味なほどに大きかったのだ。
およそこの世のものとは思えないその目が、不意にゆっくりと動きだす。
先生は急いでその場を去りたかった。
しかし、目が合ってしまった後では遅すぎた。
先生は目をそらすことができず、その場から離れることもできなかった。
体からは嫌な汗が吹き出てきた。
少女は依然、机にほおづえをついたままで、先生の目を見つめる。
その時だった。
ニタァ…
女子生徒は奇妙な笑顔を浮かべたかと思うと、座っていた椅子から教室の床にくずれおちた。
そしてそのまま床を這い、教室のドアを出て、廊下をすさまじい速さで這っていったのだ。
机にほおづえをついていたのと同じ態勢のまま、ひじだけで。
廊下にはしばらくの間、かん高い笑い声が響いていたという。
ケタケタケタケタケタケタ…
ここまで話し終えると、先生は急に神妙な顔つきになった。
「それでな、その女の子が座ってた場所っていうのが…」
僕たちの今いる教室は3―3だった。
「ちょうどお前が座っとる、その場所や」