ある釣り師のなぞなぞ

けん  2006-10-07投稿
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 「魚が全然釣れなかった池で、魚が急に釣れだすようになったんだ」
 釣り師がいう。

 「なんでだと思う?」

 この場合の魚とは、ブラックバスを指すのだろう。 事実、我々は何度かバス釣りを共にしたことがあった。
 今日もこれからどこかの池に行こうとしていた。

 僕は考えるようなふりをした後、自信なげに答えた。

 「釣り方をがらりと変えたんだろ。簡単なことさ」

 「そういうことじゃない。そうだな…池、または池周辺の環境が、あることがきっかけで変わったんだ」

 これはなぞなぞなのか。意味がわからず、少しもどかしくなる。

 「豪雨かなんかで、池の構造が変わった。それでその、魚にとって良い環境が…」

 「ちがうよ」 
 釣り師が僕の言葉をさえぎる。

 「わかった、お手上げだ。それより早く行かないか。日が暮れちまう」

 だんだんイライラしてきた。
 最近僕は、不調続きだったのだ。

 「死体があがったんだ」

 釣り師がいう。
 何気ない表情で。

 「それから誰もその池に寄りつかないんだよ。魚の警戒心もすっかり消え失せちまってるんだ。釣れるぞ〜」

 釣り師の釣り師っぷりに、僕は少し舌を巻いた。

 「どこかの釣り人が偶然にも釣り上げてしまったらしいんだがな」
 釣り師はそう続ける。

 「もうこんな時間だけど大丈夫かな」
 僕は不安になってきた。
 しかし今日の本命魚であるブラックバスは、夕方〜夕暮れ前によく釣れだす。

 「お前は最近不調が続いているらしいし」
 時刻は午後6時過ぎ。

 「今からその池に行ってみようか」

 「嫌だと言ったら…?」
 僕は聞いてみた。

 「お前も殺して、池に投げ捨ててやろうか」








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