林間学校も初日、二日目が過ぎた。
暑い中をとにかく歩き回り、一瞬にして水筒のお茶が底をついたウォークラリー。
宿舎のお茶を補充しようとしたら、全部HOTだったことには閉口した。
体育館のような場所では、友人同士の交流を深めた。
自分のプロフィールが書かれたカードを首からさげて館内をうろつき、より多くの生徒と会話を交わすのだ。
この間、ヒロキは驚くほどにおとなしかった。
初日のあの勢いに比べると、明らかに精彩を欠いている。
「UNOやろうぜ、UNO!」
誰かの声にみんなが集まりだす。
晩ご飯を食べ終わった後で、みんなそれぞれに部屋でくつろいでいる。
ヒロキもUNO班に加わったようだ。
もう南さんへの興味は消え失せてしまったのだろうか。
僕は思う。
実際のところ、勇気がないのだろう。
逆に勢いに乗って、南さんにちょっかいをかけられても困るのだが。
やがて入浴の時間。
「よっしゃー!お前らも見せろやー!!」
脱衣室でモノを振り回しながら、タケシが騒ぎたてる。
タケシは頭が良かった。
学校での彼の様子を見ていれば、それは自然にみんなの認めるところであった。
しかし、途方もなく下品だった。
学校で水泳の授業があったとき、何のためらいもなく女子の前でモノをさらした。
「なんや、お前らのはまるで小エビのようやのう!」
タケシは顔に笑みを浮かべる。
「言われてますよ、ヒロキさん」
僕はヒロキに耳打ちしてみた。
「ほっといたらええねん」
いつになくクールに返してきた。
「ヒロキは大人やなぁ。下は子供やけど」
続いて冗談をはいてみる。
「いやいや…」
少しあきれたように首を左右に振る。そして言い放つ。
「お前知ってるか?この後きもだめしやねんぞ」
たしか最終日の夜にそんなことをすると、林間学校のしおりに書いてあった気がする。
「南さん絶対ビビりよるで。そこで俺は絶対動じたらあかんやろ。いわば大人や」
こいつ…本当は怖いくせに。
どうか予期せぬことがありませんように…色んな意味で。
僕は軽く祈った。
続く