ヤバい…
が、しかし。
まだ間に合う
時計の針は既に8時を差しているが、俺が通う高校まで走って15分。
始業は8時20分だから、早く着替えて走っていけばギリギリ間に合う。
そう思った俺は急いで着替え始めた。
「兄貴?」
こんな緊迫した状況でも話し掛けてくる妹に対して苛立ちながら答える。
「何だよ、悠香!」
「兄貴が制服に巻いたネクタイ…私のなんだけど…」
ん?
そう言われて初めて自分が制服のネクタイを間違えたことに気付く。
「悪かったな。」
そう言って俺はネクタイを外した。
悠香(はるか)は俺の妹だ。
俺より頭が良いから、地元で有名な私立高校の九条学園に通っている。
九条学園は有力な進学校だ。
毎年T大やW大やK大に数名を輩出している。
かくいう悠香もK大を目指していた。
時計を見ると8時10分…
「遅刻確定だね。この分だと。」
笑いながら悠香が言う。
「誰のせいだよ!」
「自分が悪いんでしょ〜!」
悠香が通う九条学園の始業は8時50分。
バスで通学するので8時30分に家を出ても間に合うらしい。
そうこうしてる内に20分になってしまった。
「ヤバ!」
俺はダッシュで家を出た。
「いってらっしゃ〜い」
ひらひらと手を振りながら悠香が見送ってくれた