恋ごころ 第一抄 第二話

浅川悠  2006-10-08投稿
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学校へ急ぐ。

「待ってくださーい!」

校門を閉めようとしている事務の先生に叫びながら走る。

俺の通う高校、栢山高校(かやまこうこう)は、九条学園とは違った意味で有名だ。

栢山市に二つある高校の内頭が良い方が九条学園、悪い方が栢山高校だと言われる程成績が良くない。

現に去年の入試の志願倍率は定員540人に対し0.6倍。
ちなみに推薦入試希望者はたった3人である。

この数字を見ればどれだけ人気が無いかわかるだろう。

「今日も遅いわねぇ。美凪京介君?」

「今日もは余計です!」

そんなやりとりをしながら校門を走り抜ける。

階段を昇り、教室へ急ぐ。
と、その時。

「美凪君?」

誰かに呼び止められる。

間違いない…この声は…

「今日も遅刻ね。一体どういうつもりかしら?」

御崎先生が呆れ顔で聞いてくる。

先生の名前は御崎純(みさきじゅん)。
皆は御崎先生と呼んでいる。

無論俺も例外ではない。

女子バスケット部の顧問で部員の間では評判はいいようだ。

「ちょっとゴタゴタしてて…」

先生の顔が一転して笑い顔になる。

「また悠香ちゃんとケンカでもしたの?」

「ええ。まぁそんな所です。」

御崎先生の家は、俺の家の裏にある。

だから悠香の事も知っているようだ。

「まあいいわ。早く教室に行きなさい。」

「はい…」

そう言って俺はまた教室へ向けて走りだした。

「こら。廊下は走らないの。」

「はい…すみません。」

今度は怒られないように歩いて教室へ向かった。



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