学校へ急ぐ。
「待ってくださーい!」
校門を閉めようとしている事務の先生に叫びながら走る。
俺の通う高校、栢山高校(かやまこうこう)は、九条学園とは違った意味で有名だ。
栢山市に二つある高校の内頭が良い方が九条学園、悪い方が栢山高校だと言われる程成績が良くない。
現に去年の入試の志願倍率は定員540人に対し0.6倍。
ちなみに推薦入試希望者はたった3人である。
この数字を見ればどれだけ人気が無いかわかるだろう。
「今日も遅いわねぇ。美凪京介君?」
「今日もは余計です!」
そんなやりとりをしながら校門を走り抜ける。
階段を昇り、教室へ急ぐ。
と、その時。
「美凪君?」
誰かに呼び止められる。
間違いない…この声は…
「今日も遅刻ね。一体どういうつもりかしら?」
御崎先生が呆れ顔で聞いてくる。
先生の名前は御崎純(みさきじゅん)。
皆は御崎先生と呼んでいる。
無論俺も例外ではない。
女子バスケット部の顧問で部員の間では評判はいいようだ。
「ちょっとゴタゴタしてて…」
先生の顔が一転して笑い顔になる。
「また悠香ちゃんとケンカでもしたの?」
「ええ。まぁそんな所です。」
御崎先生の家は、俺の家の裏にある。
だから悠香の事も知っているようだ。
「まあいいわ。早く教室に行きなさい。」
「はい…」
そう言って俺はまた教室へ向けて走りだした。
「こら。廊下は走らないの。」
「はい…すみません。」
今度は怒られないように歩いて教室へ向かった。