そして、学は莉央を見つめ、彼女の肩に手を乗せては、やさしく彼女の身体を引き寄せた。
学は瞳を閉じては心中で、呟く。
(莉央ちゃん……)
そっと莉央の膨らみのある唇に少しずつそして、確実に近づくと、学の手には少し力が入いり、
(……学くん)
彼女もまた、瞳を閉じたのだった。
お互いの唇が重なりそうになった時、いきなり、彼女が搭乗するはずの便の搭乗手続きが、もうすぐ終了するという内容のアナウンスが流れたのである。
二人の耳にも聞こえてきたのだった。
二人は我に返り苦笑しては、お互いの顔を見ると照れていた。
落ち着きを取り戻すと、莉央がついに、搭乗する事を学に切りだしたのである。
「もう、……行かなくちゃね」
「うん」
「それじゃあ、行ってきます」
「うん」
トランクを持ち、手には搭乗券を握りカウンターに向かうと、荷物を量り、手続きをして終わると、遠くにいる学の方を一度、振り返り見ると、誰かが学に駆けよっているところが目に映る。
その人物が誰か、わかったと同時に体は他のお客に押され、そのまま中に進んでしまうと、二人の姿が見えなくなってしまった。
(なんで? どうして?)
莉央はただ呟く事だけしか出来なかったのだった。