【プロローグ 〜カレーパン〜】
秋。
秋といえば、スポーツの秋。
秋といえば、読書の秋。
秋といえば、食欲の秋。
秋といえば―――\r
「あたしの13の誕生日っっ!!!」
「はいはい、おめでとさん」
「13っていっても、身長は139cmじゃあ、・・・・・・・・・ねぇ?」
一人の少女は片手に本を。
もう一人の少女は片手にチョコロールを。
そして、浮かれている少女は踊っている。
「っもう!うるさいよ、ミニマムっ」
「いいじゃんか、のっぽん」
通称(愛称?)ミニマムこと松本莉歌は、
「のっぽん」と呼ばれ続け、親しまれている赤坂香奈湖の愛読書を取り上げた。
「あっ、コラ!ミニマムりか!」
香奈湖は本のために莉歌を追いかける。
「チビ助、ほら。チビの好きなカレーパンだぞー」
と、莉歌の目の前にカレーパンを見せたのは秋山光(あきら)だった。
「あっっ!そのカレーパンは田中ベーカリー製の超高級カレーパンっっっ!!!」
「りか、かなの愛読書を返せばコレ、あげるけど?」
莉歌はそう言われ少しためらったものの、
「・・・カレーパンのためっ!」
と言い、あっさり愛読書を返したのであった。
「ようやく戻ってきた、私の愛読書「ロビンとマークの赤い糸」が」
「光のお陰だヨ♪」
「うん、ありがと。ふぅ、続きを読むとしますかな」
ガラガラガラ!!!
「はいはいはいはい、楽しい楽しいお勉強のお時間ですよー。みんな席ぃついてー」
「あっ、西崎先生っ!やべっ、本読めない・・・」
香奈湖はがっかりしつつ、本を急いで机の中にしまった。
「はぁ。カレーパンは次の休み時間までおあずけだぁ・・・」
莉歌もがっかりしつつ、秋晴れの空をじっと見つめていた。
ゆっくりと流れる、わた雲を見つめて。
【プロローグ END】