恋ごころ 第一抄 第三話

浅川悠  2006-10-09投稿
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教室に着いた。

既に10分間の朝課外が始まっていて、教室はとても静かだ。

幸い俺の席は一番後ろの廊下側だったので、誰かに見つかる事無く席に座る事ができた。

課外が終わり、ホームルーム。

「では美凪君。出席簿を。」

担任の佐藤先生が出席簿を持ってやってきた。

「はい。わかりました。」

ここ栢山高校では、出席簿を付けるのはクラス委員長の役目になっている。

だが俺は委員長ではない。
言うなれば副委員長だ。

「全く…あのバカ。また遅刻かよ。」

自分も人の事は言えないが。

と、その時。

「悪い悪い。また遅れちまったよ。」

「いい加減にしろよな。友和。」

「お前も人の事言えないだろ。」

「う…そりゃそうだが…」

「とにかく、俺が出席簿付けとくよ。一応委員長だしな。」

そう言うと、彼は出席簿を付け始めた。


彼の名前は有川友和(ありかわともかず)。

栢山高校3年G組の委員長である。

にも関わらず遅刻魔として有名だ。

俺とセットで。

サッカー部に入っていて、今年こそは全国大会だと躍起になっている。

ちなみに俺を京介と呼ぶのは友和だけである。
友和はクラスメート全員を苗字で呼ぶが、1年の時に「美凪さん」と呼ばれキレて以来、下の名前で呼ぶようになった。


「なぁ京介?」

「何だよ。」

「今日も片瀬は休みなのか?」

「だろうな。」


片瀬美玲(かたせみれい)。
バスケット部に所属している女子だ。
バスケット部ではエースで、県代表入りは確実と見られているが、最近は怪我で入院していると御崎先生から聞いていた。


「入院してるんだよな。確か。」

「あぁ。」

それから数秒後、友和は思いついたように話し始めた。

「そうだ。片瀬の見舞いに行こうぜ。」

「あぁ。それは構わないが…良いのか?」

「何が?」

「部活だよ。お前全国大会懸かってるんだろ?」

「今日は部活は休みだよ。だから今日行こうと思っているんだ。」

「わかったよ。今日の放課後だな。」

「頼んだぞ。」


そんな会話をしている内に1時間目の始まりを告げるベルが鳴った。



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