天使のすむ湖69

雪美  2006-10-09投稿
閲覧数[281] 良い投票[0] 悪い投票[0]

 十二月になり、しんしんと冷え込む日が続くと、香里は午前中は頭痛を訴えて、起き上がれない日々が続いていた。
俺は、そっと顔を近づけて、寝息を確認すると、ほっとしてそっとしておいた。

午後には起き上がるので、昼食の後に、広いリビングで俺は香里に聞いた。
「もうすぐクリスマスなんだけど、何かほしいものとかある?」
すると、香里は少し含み笑いをしながら
「そうねー一樹と共に生き続ける命がほしいな〜」
と言うので、返事に詰まっていると、くすくす笑いながら、
「冗談よ、本気にしないで・・・」
最後の方は、少し哀しそうで、俺が黙り込むと、香里は真顔になり
「もしも、願いがかなうなら、一樹とホワイトクリスマスがしたいな〜雪が降ればいいのにね〜」
と言った。俺も笑うことにして
「それも叶えられるかどうかわからないけど、一緒に雪が見られたらいいな〜」
と俺も答えた。
確かにこの湖にはなんでもそろっているが、香里がほしいのは、お金で買えないものばかりで、お金では買えない経験がしたいのだろう。今は誰も香里の自由を束縛したりはしないのだから・・・お嬢様育ちも楽じゃないんだな、と俺は思っていた。きっとずいぶん我慢してきた結果なのだろう。

馬鹿げてると、笑うかもしれないが、俺は本気であれから毎日、クリスマスに雪が降るようにと、空を見上げては祈っていた。愛する人のために、無謀なお願いを天の神様にしていた。
神様はばか者と笑うか、よしよしと願いを聞き入れてくれるか、とにかく祈るしかなく、これが最後のクリスマスだと思うからこそ、その願いよ届いてくれと、真剣に思ったのだった。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 雪美 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ