《高校デビュー》
二度とあんな屈辱まみれの人生なんか送るもんか。ばいばい、あたし。あんたなんか嫌いだよ。初めまして…ううん、やっと出てきたね、本物のあたし。
アヤは今日、高校に入学した。化粧はバッチリ、短いスカート、ルーズソックス。いかにも女子高生だ。
だけどアヤは、中学時代は不細工で地味な女の子だった。彼氏などもちろん、男友達すらいなかった。女の友達すら、ダサい子しかいなかった。アヤはそんな自分が大嫌いだった。本当はもっと可愛くて明るい子達と居たい、男友達が欲しい、彼氏が欲しい…当たり前のような世界に入っていけない自分が嫌だった。アヤにとっては憧れの世界だった。
高校に入ったら変わってやる。
アヤはそう決意していた。アヤは努力した。化粧によって驚くほど可愛く変化していた。自分に自信をつけたアヤはどんどん明るくなっていった。
アヤにはカスミという名の幼なじみである親友がいた。カスミは中学のときから明るく人気者だった。そんなカスミが親友であることをアヤは心の底から誇りに思っていた。
カスミと共に高校に入学したアヤは、クラスの子ともすぐに仲良くなれた。カスミの影響もあるだろう。必死でカスミのテンションに合わせた。次第にアヤは、明るい子としてクラスの人気者になった。まるで、中学時代のときとは別人である。アヤはとても幸せだった。俗にいう《高校デビュー》だとしても、望んでいた世界を手に入れたのだ。
しかし、アヤの幸せは長くは続かなかった。
《続く》