西村探偵事務所

名も無き者  2006-10-10投稿
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裕太はゆっくり立ち上がった。脇にかけてあったコートを羽織る。その時彼の腰に黒い塊が見えた。
外にでて空を見上げる。鉛色の思い空がそこにあった。
「さてっ行きますか」近くに止めてあった自動車に乗り込む。
緑色のオープンカー。しかし、それは見た目だけで、年代が来ていた。走るたびにバフンっと音を起てる。彼のお気に入りの愛車だった。
バスン…ブロロロ…低いエンジン音が辺りに鳴り響く。運転席で鼻歌を歌っていた彼はふとアクセルを緩めた。徐々にスピードがなくなりやがて止まった。
「なににしよっかな…」
彼が頭を悩ませているのはコーヒーだった。めのまえには少し錆が見える自動販売機。型が古いのか中は全てコーヒーだった。
「やっぱりここは王道のポスにすべき…でも…新しい味も捨て難い…」
彼が悩んでいるその時だった。
ウィィィーーー…
早朝の静寂を撃ち破る巨大な機械音。
「あれ?」
首を傾げる彼の前で自動販売機が変形し始めた。
みるみるうちに変形をして足が作られ腕が作られ…人型になった販売機。
「故障かな?それともすでに依頼は始まってる?」
彼の思案を打ち消すように販売人が腕を振り下ろした。

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