翌日。
教室には珍しく遅刻していない友和の姿があった。
「よっ。京介。」
「珍しいな。明日の天気は槍だな。」
「そんな事言うなよ。俺だって全国目指してるんだから。」
「朝練か?」
「ご名答。」
遅刻魔の友和が始業30分前に教室にいる理由が分かった。
「しかし大変だよなぁ。朝練なんて。」
「そんな事はないさ。成瀬さん達だって朝は泳いでるんだぜ?」
「そうなのか?」
「知らなかったのかよ。毎朝インターハイ目指して泳いでるよ。」
「ふーん…」
成瀬さん達とは、成瀬麻穂、成瀬佳穂(なるせまほ、なるせかほ)の双子姉妹の事だ。水泳部に所属している2年生で、姉妹そろってエースとなっている。
「う…」
突然目の前の風景が歪む。
「大丈夫か?京介?」
「きょうす…」
意識が遠退いていく。
気が付けばそこは保健室だった。
「大丈夫?」
「あ、はい。」
「ちょっと体に負担が掛かってたみたいね。今日は帰りなさい。」
有無を言わせぬ言い方をするな…この先生は。
この先生…柳田小夜子先生は保健の先生だ。
今年赴任してきた先生だが、見た目の年齢から考えると恐らく採用されたばかりなのだろう。
「分かりました。」
そう言って俺は家路についた。