生涯の恋人 24話

ふく  2006-10-11投稿
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「岩村。」

朝礼の後
担任の先生から呼ばれた

ついに合格発表の日だ

職員室に入ると
緊張が高まった
結果はダメだと思っていても1%の可能性を信じていた私はただただ祈るしかなかった

「はい。」

先生の机の横に立った
先生の顔はどちらとも取れない表情をしている

「結果だが…」

口の中にあるありったけの唾をゴクリと飲み込んだ
手が汗ばむ

「不合格だったよ。」

「…そうですか。」
「ダメだった理由だが、まず競争率が高かったから仕方ない。それと………」

後の先生の言葉は耳に入ってこなかったただ呆然と立ち尽くした

職員室を出て入口の公衆電話の受話器を取った
一番に家に居る母に結果報告をした
母は「仕方ないね。」しか言わなかったがショックを隠そうとしていたのか少し声が震えていた

教室まで帰る廊下が長く感じる
何を考えるわけでもなかった
魂が抜けるような感覚だった

教室のドアの前まで来るとハッとした
トイレに引き返し人が居ないことを確認し携帯を取り出した
【結果だけど、やっぱりダメだった。】
彼にメールを打ったきっと彼も気になっているだろうと思った

【次頑張ろうぜ!】
すぐに返事はなかった
きっと彼なりに言葉を選んで送った一文なんだろう

この軽いノリみたいなものが気持ちを楽にさせてくれた

それにしても
一日中上の空だった簡単に立ち直れる性格でもなければ
前向きに考えられる性格でもない

全ての授業が終わって放課後になると
肩の力が抜けた

周りにショックを見せるのも気にしているような素振りを見せるのも私のプライドが許さなかった

みんなが帰った放課後はいつもにない解放感を感じた

幸い
教室で勉強をして帰る人は私のクラスでは居なかった

「はぁ〜!」

一日我慢したため息が一気に出た

教室に残ったものの勉強をする気はしない

窓際の席に座り
しばらく外を眺めた

突然教室のドアが開いた
振り向くと彼だった
彼に笑顔を見せてみたが口元が引きつってうまく笑えない

「外、出ようぜ。」
「どうしたの、急に。」

「気分転換だよ。」
「うん。」

いつでも彼は
私を気遣ってくれる
『何でそんなに優しいの?』と聞いてみたくなる


靴に履き変え外に出た
風の冷たさが心に痛い

彼の顔が見れない
今見たら
涙が溢れ出してしまいそうだった

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