生涯の恋人 25話

ふく  2006-10-11投稿
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高校から少し行くと夕方おじさんおばさんがジョギングに使っているくらいのちょっとした広場がある
そこは入り組んだところにあり六時過ぎくらいには入れなくなってしまう為 あまり使われていないのだろう
私も来るのは初めてだった


彼は私に何も聞かなければ結果に対して何も言わなかった

でも
こうやって私を外へ連れ出してくれたことが何よりの思いやりだった

ただ彼の表情にも曇りがあった

「気分転換になったよ、ありがとう!」
少し笑えた

「実はさ、俺、今日○○先生に言われたんだよ。」

○○先生は彼のクラスの担任だ

「彼女が不合格だったのは残念だけど、あんたまでそんなに落ち込んでどうするのって。俺、自分では気付かなかったけど今日かなり暗かったみたい。先生にまで言われてしまったし。」

「そうだよ、熊崎君まで暗くなることないのに。」

「だって…。」

その先は言わなくても分かる
私が思っている以上に 彼は私のことを想っていてくれているのかもしれない

「俺に何かして欲しいことある?今日は言うこと何でも聞いてやるよ。」

「え〜?して欲しいこと?」

本気で迷った

「じゃあ、おんぶ!」

何を思ったのか自分でも良く分からない彼も思わず吹き出した

「おんぶって、そんなんでいいの?」

「だって難しいんだもん。いいよ。」

「じゃあ、はい。」
彼の背中に抱きついた
こんなに密着するのは初めてだった

ドキドキするのはもちろんだったが
痩せた彼の大きな背中に安心した

「あったかい…。」
暖かい背中
いつもは後ろから見ていた背中に
今こんなにも近づいている

涙が出そうだった

「無理しなくていいよ。泣きたい時は泣いていいんだからさ。」

「泣かないよ…。」
声が震えた

さっきまで我慢していた涙が溢れ出した
目の前がぼやけて見えない
彼の肩が涙で濡れた
彼は黙って歩いていた

何で分かってしまうのだろう
今にも泣き出しそうな顔をしていたのだろうか
精一杯気持ちを押し殺して気付かれないようにしていたつもりだったのに

『このまま死んでもいいや』
大袈裟だけど本当にそう思った

「俺が一緒だから。」

彼の一言にまた涙が止まらなくなる

ショックの涙と彼の優しさに対する嬉し涙が混ざっていた

「うん…。」

涙を拭うと彼の肩に顔を埋めた

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