君の掌5

田舎もの  2006-10-11投稿
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次の日の朝。少し重い足取りで学校の門をくぐる。井畑に嫌われてたらどうしよう…そしたら私…私…少し悪寒が背中に伝わった。由希はその考えをかき消すように頭を振り、教室に入った。「おは―…「ねぇ由希!」突然クラスのいつも固まってる女子四人組が駆け寄って来た。わからない組み合わせに由希はしばし唖然とする。「え?な、何?」何故か女子達はにやにやしてて居心地が悪い。真ん中にいた女子が口を開いた。「ねぇ由希、井畑が好きって本当?」「え…?」みんながこちらを見ている。どうしてバレてるの?「信じらんな〜い!あんなののどこがいいの〜?」一番端にいた女子が言うと、四人が一斉に笑った。そんな…私、綾歌にしか言ってない―…その時、恵梨と視線が合った。「…恵梨…?」恵梨が目を伏せる。恵梨…どうして…!?「井畑にチクっちゃう?」「そうしよそうしよ!早く!」女子達が井畑の席にかけて行く。「ちょっと…やめて!」由希がそう言った時、女子達の前に綾歌が立ちはだかった。「綾歌…」綾歌は厳しい目で女子達を見ている。けど四人はにやにや笑うだけ。「綾歌?どけてよ、井畑に早くチクんなきゃ!」「嫌だね、そんな事して面白い!?同じクラスじゃん!」そう言った綾歌を女子達は笑い飛ばした。「あははは!何々?早くどけないと綾歌の好きな人もバラしちゃうよ?」綾歌の顔がカッと赤くなった。女子の一人が天を仰ぐ。「綾歌の好きな人は〜…」その時、綾歌がその女子の顔をすごい力で殴った。「きゃあ!」女子が勢いで倒れる。綾歌の手は拳を作ったまま震えていた。「お前等…こっちが大人しくしてたらいい気になりやがって!」女子に飛びかかろうとした綾歌に井畑が両手をかけて止めた。「綾歌!やめろ!」そして井畑は由希を見た。その視線が怖くて、肩が一瞬大きく震える。「由希―…」井畑がその名を呼ぶ。由希が震えながらうつむいた。「〜〜!」由希が教室から出て行く。「由希!!」井畑が叫んだ。その言葉さえも怖くて由希は走り続ける。「ぁ…ぅわ…ぁあ…!」荷物の重さは気にならない。そんな感情さえ持っていない。「いや…恵梨…どうして…!!」階段の下りの始まりで足を取られ、転んでしまった。痛い。痛い。「ぅ…ぅ…ぅう…」涙がぼろぼろと流れ落ちる。信じてた。信じてたから言ったのに、どうして?どうしてよ?「恵梨…どうして!どうして!!?」由希が…泣き声を上げた。

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