『彼への想い』と
『独占欲』は同時に大きくなる
これからもっと
後悔と共に残された私は彼に謝りたい気持ちでいっぱいだった
でも今は素直に『ごめん』が言える自信はない
『もしあの時彼に優しく答えていたら』『あんな態度を取らなければ』なんて思ったりもしたが
人生に『もしも』なんて無いのだ
だから一秒一秒を大切にして行かなければならない
でもたった一秒で事に対する正解なんて出せないから後悔をする
そして何が本当に正しかったのか
何をすべきだったのかなんてそう簡単には分からない
正解なんてこの世にはないのかもしれない
難しいものだ
そんなことを考える前に目の前のことを考えなければならない
結論が出ないまま帰る時間になってしまった
彼を迎えに行くと彼は笑顔だった
さっきのことなんて何も気に止めていないのだろうか
笑顔で迎えに行くつもりだったがあの光景を思い出すとどうしても笑えない
そんな私に気付いたのか彼の口数も少ない
「朋美、どうした?何か違うけど。」
「別に。」
「何?怒ってる?」
「別に。」
後悔したはずなのにまた冷たくしてしまう
『私だけを見て欲しい』
そう思う私はわがままなのだろうか
「言わないと分からないよ、言って。」
黙ってしまった
言って良いのだろうか
言って嫌われないだろうか
「何?」
「あのさ……。さっき熊崎君に会いに行った時に廊下で○○ちゃんと話してるの見て、何か嫌だった…。」
彼は笑った
「ヤキモチやいてくれたんだ。」
「何で笑うの。」
「だって、そんな風にヤキモチやいてくれたのが嬉しいもん。」
「嫌だったんだもん。」
「廊下で会ったから話してただけだよ。大した話じゃないし、心配しなくて良いよ!」
「分かった…何かごめん。」
「いや、嬉しい。」
ヤキモチをやいて嬉しいと言われるなんて思わなかった
彼は素直だ
そして私も素直に気持ちを打ち明けた
これが正解だったのか
すぐには笑えなかったがいつの間にか彼の笑顔につられるように笑っていた
彼のことがこんなにも大好きだ
ヤキモチは心が痛いけど
それだけ彼が好きなんだ
彼が私に対して同じようにヤキモチをやいてくれたら
きっと私も嬉しいのだろう
『自分の物』
そう思うのは彼も同じであって欲しいと思った
またこれも一つの『独占欲』なのだろう