「一体何なんだよ!」
青年は叫びながら二人を睨みつける。
「貴方にはまだわからない事。だからわからないうちに、私達の神殿に連れて行くわ。抵抗するなら貴方が同胞である可能性があっても、消させて貰うわ」
「同胞って何の事だよ!」
青年は逃げるように林の中に飛び込む、後方から先ほど聞いた甲高い音と、地面を削る破壊音が聞こえてくる。
だが、振り向く余裕なんてなかった、がむしゃらに林の中を走り、人気のある所を目指した。
「ふん。逃げ足は速かったな」
懐から煙草を取りだし、矢沖は吸い始める。
小百合は嫌そうな顔をするが特に気にする事なく吹かし続ける。
「そうね。だけどこのまま逃がすわけにもいかないわ、彼は気付いてないけど神覚醒が始まっているわ。もし私達の同胞なら他のチャイルドに殺されるわよ」
煙草の煙が苦手な小百合は矢沖から離れるが、嫌がらせのように離れたぶんだけ矢沖は近付く、小百合が睨み付けると誤魔化すように話を始める。
「ふん。同胞でもあんな腰抜けいらねぇよ」
残された二人は、林の中には入らず青年の先回りをするために動き始める。
突然、最近はやりであるアイドルグループのエチケットガールの新曲、ポイ捨て厳禁。が流れ出す。
「ふん、電話だ」
矢沖のポケットから出された携帯からは可愛らしい声が流れて来る。
「もしもし。……ああ……ふん……そうか……で、どうすればいい?……わかった。……今から向かう……小百合。帰るぞ」
携帯をポケットにしまい矢沖は歩き始める。それに続くように小百合も歩き始める。
「そう。神殿からだったの」
「ふん。ハデスチャイルドに不穏な動きがあるらしい、今から神殿に戻り対策をねるらしい、マイクとメイリンも向かっている。」
二人は道路に止めてある赤いスポーツカーに乗り込む、乗ってすぐ小百合はシートベルトを装着する。
「ふん。そんなに俺の運転が信用ならねぇか」
「シートベルトをつけるのは当たり前でしょ。それより、木柳 雪はどうするの?」
「ふん。あいつは他の奴が何とかするってよ」
「そう。ところであなたの、ふんってどうにかならないの?不愉快よ」
「ふん。こればっかりはどうにもならねぇよ」
二人を乗せた車は神殿に向かって走り出す。
ジャスティスフール1 終