「おーい!由希子!」
後ろから、誰かが由希子を呼んでいた。
「由希子!待って!ほら。由希子もこれ見ろよ!すっげぇ面白いから!」
その男の子は無邪気な笑顔で由希子に声をかけた。
「由希子?」
そいつは急に悲しそうな顔になる。それから可愛らしい顔をしながら、そいつは由希子の顔を覗きこむ。
「…。」
「とにかくこいよ!」
そいつは頬を緩め、にこにこと笑うと由希子の手を引っ張った。
「…れ?」
「え!何々?」
由希子がちょっと呟いただけで、そいつは目をキラキラとさせて顔をあげた。
「あなた…誰?」
由希子の質問を受けると、そいつはぴしゃりと額を叩いて、しまった!と言う顔をした。
「俺、宮坂俊平って言うんだ!一応由希子とは同じクラスなんだけどさ。」
俊平は一瞬顔を曇らせるものの、満面の笑みを由希子に向ける。
俊平はころころ表情を変えるのに、由希子の表情は変わらない。
「どした?」
俊平の顔は心配そうな顔に戻る。
「…く…で。」
「え?」
「気安く私に構わないで。」
由希子は無表情でそれだけ言うと、校門へ向かって歩き出した。
「へ?なんで?」
俊平は不思議そうな顔で校庭で一人立っていた。