平安の都・東の京に、それはそれは大層醜いと噂される姫がおりました。
その姫とは左大臣の在原兼光の二の姫・伊織姫で、父親の権力と計らいでなんとか女房として宮仕えすることは出来ましたが、意地の悪い女御や更衣、さらには自分より下位の女房にまで、容姿のことでいじめられるので、めったに宮中に上がらなくなっていました。
そのうえ、「宮仕えをする女房の中に大層醜い者がいる」という噂がますます広がり、運の悪いことに、この噂はやがて帝の耳にも届いてしまいました。
その頃、宮中の平凡な毎日に退屈していた帝は、その噂に大層興味を抱き、怖いもの見たさからか、「ぜひともその女房を一目見たい」と思いました。
そして、早速父親である左大臣・在原兼光を呼び寄せ、伊織姫をただの女房ではなく、帝付きの女房として宮中に召し使えさせるよう、言いつけたのでした。