本物のホワイトクリスマスは、俺と香里と桜井とキヨさんの四人で夜を迎えた。
いつもはあっさりと帰る桜井も、このひざの上まで積もる雪では帰れず、泊まることになった。
夜は、七面鳥の丸焼きと、豪勢なクリスマスケーキをキヨさんが用意してくれた。
香里の好きなシャンパンと、クリスマスツリーも飾り付けて、暖炉には赤々と炎がともっていた。
昨年のクリスマスは、香里が心の病で祝う気持ちにはなれなかったが、今年は体力こそ弱っているものの、香里の願う雪が降り、まるで神様からのプレゼントを受け取ったような奇跡に感謝の思いでいっぱいだった。
チーズフォンデュを四人で囲んで、食べるとたちまちパンが無くなり、チーズの好きな香里は、普段は食欲なくても、たくさん口にほおばって食べていて、香里の肖像画の天使もニコニコと微笑んでいた。
体は弱っているはずなのに、この心の健全に保たれている。昨年はほとんど意志さえ表示できなかったのに不思議だと俺は思った。
窓の外は、まだ降り止まない雪が白く染めていた、その幻想的な景色は、白の画伯と呼ばれた香里の父の風景画を思わせるものだった。