二月になると、大学受験日を迎えていた。
前日に、多分キヨさんが用意してくれたであろう合格祈願のお守りを、香里が手渡してくれた。「頑張ってね、実力出せば大丈夫だからね。」
母もまた、駅にお守りを持って見送ってくれた。「がんばるんだよ。」
岬はもう既に地元の女子大に推薦を決めていて、母と共に見送っていた。
緊張と不安が入り混じり、がちがちだった。
こんなことを言うのは生意気かも知れないが、大学受験は俺の夢の第一歩にしか過ぎない。
俺の夢は、医者になりホスピスを作り緩和ケアーに力を注ぐことだ、その第一歩が、医学部の受験だ。ここは必ず現役合格しなくてはいけない、香里のように末期の患者や余命のない人のために役に立ちたいのだ。
受験会場に着くと受験前に瞑想をして、心の緊張と不安を緩める暗示を自分自身にかけた。合格したイメージと、今まで学んできたことを出していけば必ず受かるはずだから。と言い聞かせていた。しかし、動悸が激しくなるのがよくわかった。ポケットに入れたお守りを二つ握り締め、落ち着くんだーそうすれば大丈夫だと確信はあった。
香里の顔が浮かんだ
「実力出せば大丈夫よ」
その言葉を胸に受験にのぞんだ、専属家庭教師で恋人の美しき人はどこかで見ていてくれる気がしていた。