スピニードはうつむいていた。
ワードレはスピニードに向い、座った。
「あの晩ワードレは君の家に来たんだな?金の催促に」
「うちには来ていません」ここにきて否定をはじめた。
「では、あの晩君は何をしていた?」
「友人とバーで酒を飲んでいました」
ワードレ警部は手帳をとりだした。「バー『ツィーン』で一緒に飲んでいたのはジョン・カーフィス。仕事の同僚だ。彼は12時ぐらいに帰ったと言った。事件のあったのはおそらく11時から12時までの間であることは確実だ。ツィーンから君の家までは30分はかかる。アリバイは成立した」
スピニードはホッとした様子だった。しかしワードレ警部は続けた。
「これは君がねじ曲げた時間だ。実際はまだ11時だったはずだ。」スピニードの顔色がみるみる蒼くなっていく。
「そんな、どうやって相手に12時だと錯覚させるんですか!?」
「習慣だ」ワードレ警部は顔の前に指を立てて言った。
「習慣…?」
「そう。君はジョンと酒を飲む時必ず12時に帰ることにしたんだ。そして帰る間際には必ず特定の酒を飲むことを習慣付けてい他。そして事件の当日、まだ11時なのにも関わらずその酒を飲んだんだ。そうしたことによりジョンは11時を12時だと錯覚した」
「そんなのは推測だ!」スピニードは椅子から立ち上がった。
「座りたまえ。話はまだ続く」
「アリバイを残した君は家に帰り、ヘンリーが帰って来るのを待った。そして帰って来たヘンリーを置物でなぐり、置物をその場に捨て自宅へ戻り返り血を流すためシャワー浴びた」
「ちょっ…待ってくださいよ。もし私が犯人ならなぜわざわざ置物をその場に捨てたりするんですか!?」胸に手をあててスピニードは答えた。
「そこだ。君は現場に置物を残し、自分を犯人だと警察に思わせたかったんだ」