偽りの笑顔で固め、しかしそれをごく自然に振る舞い、私は目の前にいる親友の左指に光るシルバーリングを眺めた。注がれたばかりの紅茶からは湯気が立ち上り、リングが一層輝いて見えた。ふと視線を流すと隣には同じリングを光らせた彼が、愛おしげに彼女の髪を撫でていた・・・・・。数ヶ月前私は彼にヒトメボレをした。彼の笑顔を見て一瞬で心を捕われてしまった。しかし、彼の目線の先に映っていたのは私ではなく私の親友だった。二人が付き合いだしたと聞くのにそれぼど時間はかからなかった。大切な親友だから・・笑顔でいてほしい。なにより優しい彼女だから傷付いてほしくない・・・・・私の心の中で複雑な荒波が渦巻き、そしてウネリをあげた。自分が望んだ結果なのに、左胸がズキっと痛んだ。言えないままの切なく苦しい恋に終止符をうつかのように、再び目の前の親友に視線を戻した。険しい表情でもしていたのか、心配そうに私の顔を覗きこんでいる。やはり彼女は優しい。二人の幸せを願いながら、飲みかけの冷えた紅茶を飲み干した。